沖縄で古くから伝承されている「サンチン」をはじめとする型を正確に習得することで身体をつくっていく。型をやりこむことで身体が統合化され、手足の動きが身体の中心につながった動きになる。このとき思考は停止し、右脳が最大限に活性化する。右脳主体のまま動くことが相手の大脳機能を一時的に低下させ、「無力化」させて崩してしまう右脳空手である。
この「無力化」の原理を完全に理解することは現時点では難しいが、2つの実験がある。
その一つはベンジャミン・リベットの実験がある。
情報が神経パルスとして末端から脳にたどり着くのに速度はあまり早くないため瞬時でなく、若干の遅れがある。これを利用すると相手を無力化することができる。注1}
もう一つの実験は攻保江邦夫の実験である。これによると、術が成功するとき(攻撃する側が無力化して崩れるとき)、攻撃を受ける側の右脳が非常に活性化していて、その時攻撃する側の大脳が瞬間的に機能低下し、身体のコントロールできなくなることがわかった。ただし、何故、右脳の活性化が相手の大脳機能低下が起こすかは現時点では説明できない。過去の剣術の秘伝や実際に術をかけるときの実感と一致する。この、原理説明が拙書「右脳の空手」の表題の由来である。